辛酸なめ子の「男誌Walker(男誌ウォーカー)」

男の雑誌選びには哲学がある。
生き方、人相、ファッション、性癖――
愛読雑誌はその男を映す鏡ともいえる。
巷にあふれる雑誌から気になる一冊を選び、読者に拝謁。
そこから見えてくる男子の生態とは…!?

毎月15日前後に更新!

5月刊むし

雑誌データ

月刊むし

創刊
1971年3月 /
出版元
むし社 /
月刊誌(毎月20日前後に発売) /
定価
1200円 /
公称発行部数
6000部 /
読者層
虫愛好家

4億年前から地球に生息している虫。せいぜい700万年の歴史しかない人間よりはるかに先輩ですが、蔑視され虫けら扱いされてしまっています。でも、そんな虫の価値がわかる虫マニアも少なからず存在していて、そんな彼らの愛読誌が「月刊むし」。発行は(有)むし社で、一見して理科の教科書のようなストイックな体裁です。

「月刊むし」カバー

虫のバイタリティをリスペクトしてます

「月刊むし」の愛読者は、まじめで浮き世離れした男性かと思ったら、現れたのは育ちの良さそうなおしゃれ男子。堤たか雄氏は、やんごとなき御曹司でもあらせられます。インペリアルファミリーの方々がヒドロ虫とかハゼとかそれぞれマニアックな生物をご研究されていらっしゃったように、恵まれた環境に育つと生きとし生けるものへの慈愛がわくのでしょうか。堤氏に虫に目覚めたきっかけについて伺いました。

「たしかにありがたい環境だったと思います。実家には広い庭があり、池もありました。祖父が戦中に買った土地で広さは4000坪位。コクワガタが庭にいたり、池ではザリガニが釣れました。自然が友だちでしたね」

と、セレブなビオトープに思いを馳せる堤氏。しかし小学校に入ると、虫好きすぎて周囲に距離を置かれるように......

「昆虫好きは暗いとかキモいとか言われて、友だちにムシされ、虫に語りかけていました」

人にムシされ、虫になぐさめられ......そんな駄洒落のような連鎖でますます虫との絆を深めていった堤氏。カブトムシやノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、カミキリムシ、キボシカミキリと次々飼育。昆虫採集や標本作りと充実した虫ライフを送りました。大学時代もどこかに行くとついでに虫を採ったり、虫を途切れさせませんでした。そして2000年頃、昆虫採集グッズが売られている店で「月刊むし」を見つけ、以前から存在は知っていたものの、興味を引かれて購入。以来、好きな虫の特集の時には買って熟読しているそうです。

「月刊むし」2012年11月号を見ると、「カブトムシ幼虫の歩脚は成虫歩脚とは連続性がない」という論文のために、幼虫の脚を切断した写真が載っていたり、油断しているとたまにグロいです。

「僕も実験したことあります......バッタの幼虫の真ん中の脚をハサミで切って観察していたら、脱皮のあと足はちゃんと再生していてよかったです。あと、ガのサナギを見つけたんで、コンコンと割ってみたら中からクリーム状の粘着性ある液体がでてきたことも......あれはかわいそうでした。小学生の時、アリの触角を切ったらどうなるか実験したこともあります。方向感覚がなくなってクルクル回ってました。友だちがいないから虫と遊ぶしかなかったんです。でも、故意に殺すことはそんなにないかな」

と、好奇心旺盛な、一歩間違うと猟奇的な方向に進んでしまいそうな過去を告白した堤氏。多数の虫の一生を見てきたせいか、霊感のある人には「背後にたくさん昆虫が見える」と言われたことがあるそうです。不思議なことに堤氏を撮ったデジカメ写真を確認すると、目が青緑色に写っていましたが、虫の魂が同化していたのでしょうか。行方不明になったアマミナナフシの生き霊を見るほど、虫に入れ込んでいます。虫の産毛を見ると父性本能がわくという堤氏は、優しくそっと撫でる方法をエアー昆虫で実演してくれました。昆虫採集のためなら僻地に赴くことも厭いません。

「でも、昆虫採集に行くと、怪しがられることもありますね。地方のコンビニの床をくまなく探して、『落とし物ですか?』と聞かれて『虫探してます』と答えたり。ドライブインの女子トイレの入り口でカミキリムシを見つけて捕まえにいったら、女の人が入って来ちゃって、結構危なかったです」

昆虫好きがエスカレートして逮捕されかねませんが、どんな環境にも適応して生きてきた昆虫のタフさを思うと、試練も乗り越えられそうです。虫男子は草食男子よりも地球上で生き延びられることでしょう。

読者紹介

イラスト

堤たか雄 42歳

読者歴
10年くらい
仕事
アートプロデューサー、キュレーター
月収
700~800万円
彼女の有無
秘密
好きなタイプ
個性的で自立精神がある人。あと、虫が苦手な人とは付き合えません
リスペクトする学者
ファーブル
趣味
虫以外では美術鑑賞、旅行、料理
1ヶ月の虫のエサ代
冬1000円、夏1500円
好きなブランド
ヴィヴィアン・ウエストウッド、ポール・スミス
野望
ナナフシについて本格的にまとめて論文を発表すること
「月刊むし」の好きな点
専門性が高く、マニアックな昆虫の特集が多いこと
「月刊むし」の改善してほしい点
字が細かいのと、写真がもう少し欲しいこと
今月の主張
性教育は虫に教わりました