【めげない力で人生好転】

時代が変わると、スキルも変わる(1)

 時代を先取りして仕事をしていくことは大事です。しかし、どんなに先取りしたことであっても20年経つと、新しいことが古くなっていきます。例えば、私の場合、キャリア形成に役立った大学院時代の恩師のアドバイスは、十数年後に時代環境に合わなくなり、私は苦労しました。

 ビジネス・スクールへ入った80年代の初め、日本女性の典型的な働き方は「新卒で就職し2~3年働き25歳前後で結婚退職をして主婦になる」でした。英国は女性首相サッチャーの時代で、働く女性の数は日本より多かったのですが、上場企業での女性役員はほとんどいませんでした。
 当時の私の夢は、投資銀行で働くことでした。夢と現実の距離を縮めるため、そして大嫌いな英語をマスターするために、私は英国の大学院(MBAコース)へ留学しました。しかし、卒業の年である2年生になっても「何をどうしたら自分の夢を実現できるのか」が全く分かりませんでした。
 毎日自分なりに必死に考えるのですが、いいアイディアは浮かんできません。
 このとき初めて「自分が取ったリスクの大きさ」を知り、私は緊張の毎日を送っていました。ストレスのため髪の毛が随分抜けたのもこの頃でした。
 ビジネス・スクールにはキャリア相談窓口がありました。私は「このまま毎日自分1人で悩んでいても堂々巡り。あまり思い詰めてしまうと卒業試験まで落ちてしまうかもしれない。」と不安になり、思い切って相談窓口へ行きました。

 話を聞いてくれた先生は私にアドバイスを2つくれました。


その1:
企業へ就職する際は「コストセンター(人事や総務部)」ではなく「プロフィットセンター(営業部、会社へ利益を持ってくる部署)」を選ぶこと。

理由:
外資系金融機関に入りたいといっても、私は欧米人でもなければ男性でもない。女性の場合「実績」が数字で見えたほうがいい。投資銀行本部のバンカーは国籍・性別に関係なく成績をあげたものは評価され生き残れる。一方、コストセンターでいくら実績を上げても、不況になり企業が人件費削減を実施しはじめると女性は男性よりも先に首を切られやすい。

その2:
「タイプライター」を覚えないこと。面接で聞かれたら「タイプはできない」とはっきり言うこと。

理由:
日本人女性であるため、銀行でタイプができるというとアシスタント以上の仕事が永遠に来なくなる。しかし、「タイプができない」と言うことで、私にはタイプ以外の仕事が与えられるし、アシスタントを使う立場の仕事が与えられる。その結果、MBAで教わったことをより活用できる。

 目から鱗でした。組織のルールをほとんど知らなかった私には組織のルールをよく分かっている専門家からの貴重な助言でした。私はタイプを覚えることを止めました。
 先生のアドバイスを取り入れたキャリア戦略は、キャリア女性が少なかった80年代当時は実に正しく、「タイプができない」「MBAを取っている」と言い続けることで、私にはアシスタント以上の仕事が来るようになり、バンカ―として部下を使える身にもなりました(今は笑えますが、ある金融機関の面接に行ったとき、面接者に「女性社員は肩から上はいらない。ファイリングとかタイプをするとかの仕事がほとんどなので・・」とハッキリ言われたこともあります)。
 それから15年、IT時代が到来し、企業のルールも変わりました。企業経営者はITによるペーパレス社会の実現を目指し、私の勤務している銀行もトップ・マネジメント以外は社員・管理職にかかわらず、全員ワープロをマスターしなければいけなったのです。秘書業務は廃止され、秘書の数は大幅に減らされました。秘書失業時代の到来です。(次回に続く...)

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藤原美喜子

金融評論家、グローバル環境問題コンサルタント、金融審議会委員、ロンドン大学客員研究員。

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