【賢い質問で仕事好転】

「賢い質問」というルール(1)

「会議に出たら最低1回は質問をすること。黙って人の話を聞いているだけではダメ」と上司に注意されたのは、2度目に転職をした米国の金融機関、CSFB(クレディ・スイス・ファースト・ボストン)でのことでした。

 転職をしたばかりで職場にも慣れていなかった私は、なかなかみんなの前で質問ができなかったのです。
 しかし、注意されたからには、質問しなくてはいけません。次の会議で、やっとの思いで手を挙げて質問すると、
「君はもっと賢い質問ができるよう努力しなければならない。ただ質問をすればいいというわけではない。もっと質問にインテリジェンスが出ることを言えるよう自分を磨きなさい」
 と、さらに厳しいお小言をもらってしまったのでした。
「賢い質問をしなさい」と言われたことは、初めてでした。
(私の質問は、賢くなかったのだ。"あなたは馬鹿だからもっと賢い質問ができるよう勉強しなさい"と注意されたのだ)と思い、落ち込んでしまいました。

 当時、私が勤めていたCSFBはユーロ市場での引き受け業務(大手企業が海外で資金調達をする際のアドバイザリー業務)が世界一の投資銀行でした。そこで働くバンカーたちの出身国は21カ国にも及び、優秀なスタッフがフルタイムで仕事をしていました。一年中、解雇と中途採用を繰り返す厳しい会社でした。だから、ただルーティン・ワークをこなすだけの人は、1人もいませんでした。 
 私の上司であるビクターはキューバ系米国人。父親が小さな船でキューバを去り米国へ亡命し、米国にいたキューバ人の女性と結婚。長男として生まれた彼の子供時代は貧困との闘いの毎日だったそうです。
 親に「教育こそ、お金持ちになれるパスポート」と小さいときから教えられ、やっとの思いで奨学金をもらい大学へ進み、米国の名門投資銀行であるファースト・ボストンへ就職した、立身出世型の上司でした。

 厳しい人でしたが、彼は社会のマイノリティーが「投資銀行という競争社会で生き残っていくルール」を知っていたからこそ、何度もしつこく私に「賢い質問をするように」と注意したのです。
 当時、日本ビジネスは花盛りで、そういう背景もあり私は若かったにもかかわらず日本の電力会社、金融機関、電話会社などの担当を任されていました。
 業績はもちろん上げていました。誰の目から見ても、利益総額ではトップクラスでした。私が上司から注意を受けたのは毎週月曜日に開かれる20人ほどのミーティングの場で、今後の売り上げをどう伸ばすかの話し合いをしていたときです。
 専門家の視点で、具体的な質問をする。それが彼の言うポイントでした。しかし私は、会議中に一度質問をすれば私の役割は終わると考えていたので、「賢い質問」をするというようなことまでは頭が回らなかったのです。
 がっくりきている私を見て、同僚のボブがランチに誘ってくれました。
「若い社員は、誰でも1度はビクターに『賢い質問をするように』と厳しく指摘されるんだよ。だからあまり気にしないように」と慰めてくれました。
「彼は上司として君に期待しているからこそ、厳しく言ったので、次の会議で賢い質問ができればそれですむことだから・・」とも言い、ボブにアシストしてもらいながら「賢い質問」ができるよう努力を続けました。
(次回は、具体的な「賢い質問」と、そのメリットについてお伝えしましょう)

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藤原美喜子

金融評論家、グローバル環境問題コンサルタント、金融審議会委員、ロンドン大学客員研究員。

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