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Sometime Atlas

第十四章 『マリアの十戒』 08

8.私が言うことを聞かないとか、頑固だとか、怠けているからといってしかる前に、私がなにかで苦しんでいないか考えてほしい 。もしかしたら、食事に問題があるかもしれないし、長い間日に照らされているかもしれない。それとも、もう体が老いて、 弱ってきているのかもしれないと・・・。


 

 

前にも言ったことがあるかもしれないけれど、マリアはあること に関してとっても頑固なんだ。それは家の外で起きることがほとんど。散 歩でいつもの公園に向かう途中、突然大きな音がしたり、バイクのバリバリした音が聞こえてきたり、公園でカーン、カーン と球を打つゲートボールの音がしたりすると、マリアはその場で固まって動けなくなるんだ。一番嫌いなのは雷の音と、富士の裾野や箱根あたりで聞こえる自衛隊の大砲の音だけどね。

 

 

大好きなママが「大丈夫よ」といくら言っても聞く耳なんて持たない。来た道を戻りお家に帰ろうと、リードをグイグイ引っ張ってママを困らせるんだ。いつだったか、パパとお散歩していた時 、突然怖い音がしたので、ハーフチェーンをすり抜けお家の方向へ一目散に走り出したんだ。赤信号の横断歩道を全力疾走で渡 って逃げるマリアを追いかけたパパは生きた心地がしなかったって言ってた。もし車に跳ねられたりしたら・・・・。ママに何と言ってあやまればいいだろうとパパは思ったらしい。幸い、マリアは無事、パパより一足先にお家に到着。それからパパとの散歩のときはハーフチェーンじゃなく、絶対首から抜けないチョークチェーンに変えられたんだ。

 

 

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  散歩の途中でかたまったときの様子。しっぽは中に入り、すべての足でふんばり、抵抗している。飼い主としては、相当、カッコ悪いです。

 

 

 

 

だけど問題はそういうことじゃないんだ。チョークチェーンに変えても、お散歩中、頑固として動かなくなる性格は治りようもない。チョークチェーンをキュッと引いて言うことをきかせようとしても、おびえからは逃れられない。で、必死に後ずさりするんだけど、するとチョークチェーンが締まり、マリアは窒息寸前。のどがゼーゼー鳴る。この繰り返しにはさすがにパパも手をやいてるみたいなんだ。で、次にどんな手でくるかと思っていたら、何と胴輪作戦に出た。で も、付けるのが面倒だし、付けても恐い音がするとかたまり、抵抗するのに変わりないことを知って、これも1回限りであえなく却下。

 

 

パパやママは、マリアの前にとってもおとなしいゴールデンレトリーバーのナナ先輩と暮らしていたわけだから、大型犬の扱いに は慣れているはずなのに、マリアの頑固さには本当に困っているみたい。ガンコな性格を直す方法なんて、どんなしつけの本にも書いてないんだから。マリアはそれ以外では自画自賛したいほど従順にしているんだけどね。耳そうじ、歯磨き、つめ切り、ドライヤーだって嫌がらないし、されてもまったく抵抗しない。横になってなすがまま。むしろかまってもらえること、優しく触ってもらうことがうれしいぐらいなんだ。

 

 

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マリアがわが家に来て間もないころ、マリアがママの靴下を食べてしまった事件があった。ママが帰宅したら、あったはずの靴下がないことに気づき大騒ぎ、獣医師の先生に連絡すると、濃い食塩水を飲ませて吐かせてくださいと言われたらしい。で、相当濃い食塩水で本当 に大丈夫なんだろうかと半信半疑で飲ませてみたけれど変化な し。再度、先生に連絡し病院で処置をしてもらうことになった んだけど、今度は大量のオキシドールを飲まされ、やっと靴下を吐くことができた。靴下は驚くほどの量で、細かくちぎられた形状で吐き出した。

 

 

ママはひどい味の食塩水やオキシドール を大量に飲まされてもじっと耐えているマリアを見て、「この子はなんて辛抱強い子なの」と、マリアを一層、いとおしく感じたそうよ。それからはマリアにつらい思いをさせないよう、マリアの目の届くところに物は置かないよう気を付けるようにしたんだけどね。

 

 

マリアは繁殖場時代、劣悪な環境から抜け出そうと首輪をすり抜ける術を「生きる知恵」として覚えたんだ。そのころは首輪をすり抜けるたび、つないでいる鎖がどんどん短くなっていった。最後は まともに立てないどころか、寝ることもままならない長さになった。今は何も不足なく幸せに、快適に暮らしてるけれど、外でマリアが嫌いな音に遭遇するとパニックになってしまうのはどうしようもないことなんだ。

 

 

     伊豆の宿で、野猿を追い払うためにスピーカーから発せられる鉄砲の疑似音に反応し、動けなくなったマリア。

 

 

 

パパやママは、それがしかったり、無理なしつけで解決できることではないと、ちゃんと理解してくれている。原因や改善方法をいろいろ考えてくれているみたいだけど、マリアは決してパパやママを困らせたくてそうしてるわけじゃない。もう少し辛抱強く、待っていてほしい。マリアの重度な怖がり症、いつか必ず克服してみせるから・・・・。

 

 

「マリアがわが家にやってきてもうすぐ5年、9月には7歳になるんですけどね・・・・」(飼い主より)

 

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