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Sometime Atlas

第八章 『マリアの"一夜にして"ワンダフルライフ 鹿児島の記憶』 07

鹿児島の記憶ーその7  さようなら鹿児島、さようなら繁殖場・・・・

 

 

 

9月27日。鹿児島地方の天気、晴れ、最高気温30度C。

 

 

『この日、マリアたちは生まれて初めて繁殖場を出てお泊まりすることに。ケージの中での宿泊だったけど、これまで経験したことのない清潔で柔らかな敷物の上で、蚊に刺されることもなくぐっすり眠ることができた。

 

 

9月28日、朝になると病院のお姉さんがお散歩に連れていってくれた。もちろん、リードで引かれてお散歩に行くなんて初めての体験。ふん尿のにおいのない爽(さわ)やかな空気や踏みしめる大地がとっても気持ち良かった。

 

 

病院に戻るとおいしいご飯を食べさせてくれて、新鮮な水ももらった。家庭犬なら当たり前のことが、マリアたちにとっては初めての経験だったの。ピョンピョン飛び跳ねてしまうほど嬉しかった。そしてまたケージに戻されウトウトしていると、今度は獣医さんが健康診断のためにマリアたちの体を触り始めた。ちょっぴり怖かったけど、そんな中、Mさんたちの気配を感じたの』。

 

 

 

20070928-2.jpg鹿児島の獣医さんに、東京へ行くための最後の身支度をするため、健康診断を受けるマリア。ちょっと不安気な顔をしています。当時はMさんたちがつけてくれた「エクル」という名前でした。

 

 

 

 

そのときのことをMさんはこう回想しています。

「あの日は現場の犬の里親さんになって下さった親子が一日がかりで手伝ってくれました。鹿児島から送りだす日、動物病院へ迎えに行くと、いつも引っ込み思案だったマリアが どこか遠慮がちなそぶりを見せながらも、嬉しそうにしっぽを振って私たちを出迎えてくれたのを覚えています。

 

 

 

動物病院のスタッフも、本当におりこうにしていましたよ!と褒めてくれたのです。そして目の前に現れたマリアとランプ姉さんは、みんなから、同じ犬じゃないみたい!って歓喜の声が上がるほど、本来のきれいなラブラドールレトリーバーの姿になっていました。良かったね!と、スタッフや手伝ってくれた里親さんの家族にも言ってもらいました。マリアたちは頭を撫(な)でてもらい、本当に嬉しそうにしていたのです。

 

 

その場にいた誰もが笑っていました。 マリアもランプも笑っていました。

 

 

 

あのときのマリアたちの顔は一生、忘れられません。 本当に本当の笑顔でしたから。 嬉しそうにしている姿を見つめながら、Sさんやその場にいた人たちと、これから幸せになれることをちゃんと分かっているんだね、って言いながら 病院を後にしたのを覚えています。首輪に付けてあげた黄色い向日葵の花飾りが、マリアたちの笑顔にピッタリでした」 。

 

 

 

 

今までかかわってくれた動物病院の先生、スタッフの人たち、そしてボランティアみんなの想い・・・・。黄色い向日葵の首飾りを付けたマリアたちは希望に満ち、輝いていました。

 

 

別れではなくマリアたちの第2の犬生へ向けての旅立ち。今までもMさんたちは鹿児島から1頭1頭送り出すたびに、涙をこらえ笑顔で送り出してくれたのです。だからマリアたちも、これからの出来事に不安なく立ち向かうことができたのでしょう。

 

 

 

 

20070928-1.jpg

鹿児島空港へ向かうため、ケージに入れられるマリア。「幸せになってね」 「幸せになるよ」。Mさんとマリアがそんな会話をしているように見えます。

 

 

 

 

そしてマリアたちはクルマに乗せてもらい、鹿児島空港へと向かいました 。出発ロビーでMさんたちとの本当のお別れ (マリアはケージに入れられるとき、嫌がってみんなに迷惑をかけたみたいですが・・・・)。

 

 

 

マリアとランプ姉さん、そして2頭のコーギーは東京からわざわざ飛行機で迎えに来てくれた2人のボランティアのおかげで手荷物扱いとして搭乗することができました (犬のみを預けると貨物扱いになり、サービス、クレートの貸し出しの有無、料金などの条件がまったく異なるのです/日本航空の場合 )。Mさんたちは最後に1頭ずつ優しく撫(な)でながら、ありがとう、ありがとう、と何度も言って大きく手を振って送り出してくれました。

 

 

 


20070929-2.jpg鹿児島空港の出発ロビー前でMさんが撮影してくれた鹿児島最後の写真。このあと、飛行機に乗るなんて、想像もしていなかったでしょう。黒ラブのランプ姉さんや仲良しのコーギーもいっしょです。 

 

 

 

Mさんはある日のブログでこうつづっています。「長いこと世話をし、自分を信頼してくれるこの犬たちを飼えるものなら全頭、飼ってあげたい。心からいとしいと思っています。それが本心です」と。

 

 

 

この世で深いきずなで結ばれた同士の別れほどつらいものはありません。盲導犬クィールでもパピーウォカーとの別れ、オーナーとの別れのシーンに涙しました。自分の感情だけでなく、事態を理解してない犬の立場を思うと、何倍も、何倍もつらくなります。

 

 

 

マリアたちはもう二度と繁殖場に戻ることはありません。9月28日、Mさんを始めとするボランティアの人たちのおかげで鹿児島からJALの最終便に乗せてもらい、愛情をひとりじめできる、東京で待つ家族の元へと旅立ちました。そう、運命のフライトです。

 

 

 

この日から "マリアのワンダフルライフ" は始まりました。

 

 

さようなら鹿児島、さようなら繁殖場・・・・。

 

 

※9月28日夜、東京、羽田空港に降り立ってからのマリアの運命は、第一章 『向日葵の花飾りに込められた希望』 01にて。

 

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