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Sometime Atlas

第十四章 『マリアの十戒』 07

7.私を殴ったり、いじめたりする前に覚えておいてほしい。私は鋭い歯であなたを傷つけることができるけれど、あなたを傷つけないと心に決めていることを。

 

 

人をかむ犬は保健所に持ち込まれると、約1週間の保管期間を待たずに処分されると聞いたことがある。ボランティアさんのブログでそんな悲しい犬生をたどる犬の写真を見たことがある。

 

 

その犬の目を見たとき、マリアはなんだかとっても悲しくなった。その犬は何のために生まれてきたんだろう。殺されるために生まれてきんじゃない。その子の犬生にいったい何があったんだろう・・・と心が痛んだ。今度、生まれてくるときは絶対に幸せになってほしい、そう、願わずにはいられなかった。

 

 

犬は飼い主次第で名犬にもダメ犬にもなる。気が弱いマリアだって、もし、ひどい飼い主に飼われ、日常的に暴力を振るわれたとしたら、身を守るため飼い主に歯をむくことだってあるかもしれない。

 

 

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今は歯のお手入れ中ですが、しっかり牙が見えますね。これでガブリとやられたらたまりません。でも、マリアは手でおやつなどをあげるとき、やさしくかぷり・・・としてくれるから安心です。 

 

 

 

マリアのママは今から20年ほど前、先代ゴールデンレトリーバーのナナ先輩と犬のしつけ教室に通っていた。当時は犬を力で押さえつけ、しかって服従させる訓練がまかり通る時代だったらしい。

  


ママは大型犬のナナ先輩が散歩のときに前へ前へと引っ張らず、楽しくシッポを振って優雅に散歩できれば・・・・そんな思いから犬のしつけ教室に通った。同時期にお友達のゴールデンレトリーバー2頭も通い始めたけれど、2
頭ともすぐに来なくなった。訓練は飼い主も犬も疲れるし、愛犬をしかることに抵抗ある飼い主だから続かなかったんだ。

 

 

 

ママはそんな訓練でも犬のしつけ教室に2年以上通い続けた。優等生だったナナ先輩は通い出して4か月目に犬のしつけのモデル犬になりテレビや雑誌に出演し、2年近くたったころには教室の初級クラスの犬たちにしつけを教える立場になったんだって。教室を卒業してからはボランティアのアニマルセラピー犬として病院や老人ホームを訪問し、癒やしを与え、自身が犬としてできることをしていたんだ。そして8歳になって引退。10歳8カ月でその犬生を終えるまで、1頭の犬として、まさに立派に、人の役に立った犬生だったって、パパやママから耳にタコができるほど聞いている。

 

 

 

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ナナ先輩とパパのラブラブな2ショット。ホテルのプールサイドにて。ナナ先輩って、女の子なのにパパよりしっかりした体格してたんだ~。

 

 

 

 

そんな経験から、ママはマリアにもしっかりと訓練を入れてくれた。マリアはナナ先輩と違っていろいろなトラウマ(心的外傷)を持ってるから、訓練中は決してしかられず、たたかれたこともなく、言われたことができたら大げさなくらい褒めてくれて、短い時間だけど毎日のように続けてくれた。マリアに限らず犬は褒められることが大好きだよ。褒められればうれしくてどんどん成長していく。何度も言うようだけど、飼い主にそれを理解してもらいたいんだ。

 

 

 

最近の犬の訓練は犬の習性をより深く理解したものになって、犬の社会性を重視した訓練に変わっているんだって。有名な「犬の幼稚園」は、飼い主から離れても犬の集団の中でみんなと仲良くできる、家以外の場所でもおとなしく落ち着いていられる犬を育ててくれる格好の場所。マリアも訓練のおかげでお散歩中、ほかの犬とけんかなんかしないし、誰とでも仲良くできるようになったんだ。

 

 

 

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パパに訓練されているところ。ママよりちょっぴり怖いけど、リーダーだからちゃんと言うことを聞くようにしてるよ。

 

 

 

いつかママがマリアにこんな話をしてくれた。公園で犬に厳しく訓練をしている、同じことを何度も何度も繰り返しやらせている飼い主がいるって。いつでも飼い主の機嫌をうかがいながら行動する従順さを愛犬に求めているんだろうけれど、それは最善の方法じゃないって・・・。

 

 

 

マリアはそんな厳しい訓練をさせられなくてもに日常生活に困らない程度のしつけを入れてもらった。今まで、お散歩や旅行はもちろん、始めて会う人ばっかりのお仕事の現場でも、誰かを困らせ、傷つけたりしたことなんて一度もないよ。小さいころ、そんな経験を受けたことがあるマリアだから、誰かを困らせ、傷つけるなんて、絶対にやっちゃいけないと分かっているんだ。

 

 

 

 

いい子にしていられるから、水上バスにだって乗れるんだ。これは東京・芝浦からお台場を往復する水上バスのキャビンにて。

 

 

 

パパやママは人間と共存する社会で愛犬が問題を起こさず、お互いに楽しく生活できる最低限のしつけでも家庭犬には十分と考えている。連れていて優越感に浸りたいがための訓練をしているわけじゃない。自分に服従させるための訓練をしているわけでもない。訓練は犬を尊重しつつ、楽しく、散歩やおやつの前に、短時間、日々、継続して行なってくれるのが一番なんだと思う。

 

 

 

そして訓練とはいえ、犬は大きな声で何度もしかられ、たたかれても、なぜ怒られ、しかられてるのかなかなか理解できない生き物なんだ。長い間怒られ、たたかれたりすると、恐怖から自分の身を守るため飼い主に反抗することがあるかもしれない。でも、鋭い歯でかみつくことができても、マリアは決してそうはしない。飼い主を信頼できるリーダーだと認めているからね。

 

 

 

犬が人間に牙をむくのは、相手を信用、信頼していないか、虐待を受けたり、とても具合が悪いことを分かってくれないときぐらいなんだ。犬は生まれてきたとき、人間に牙をむくような攻撃的な感情など持ってはいないのだから。

 

 

すべての犬の飼い主さんにマリアからお願いがあります。愛犬との間に何かがあって、犬をしかり、たたこうとする前に、その原因、理由、飼い主自身が犬に信頼されているかどうか、今一度考えてみてほしいんだ。

 

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