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Sometime Atlas

第八章 『マリアの"一夜にして"ワンダフルライフ 鹿児島の記憶』 05

 鹿児島の記憶ーその5

 

 

マリアの記憶は今日もよみがえります。

 

 

 

『所有権放棄後の8月6日、Mさんのブログには驚く内容が書かれていたの。

 

「今までのことを振り返り、今後のことを冷静になって考えたい。今の気持ちのままでは前に進む自信がない・・・」

 

という内容だった。悲願の所有権放棄にやっとたどりついたのにMさんにいったい何が起きたのだろう。おそらくこの数日間に心が折れてしまうようなことが起きたみたい。後にママから聞いたことだけど、Mさんはこう言っていたんだ。「自分のことは何と言われてもいい、でも手伝ってくれる仲間に対してまで非人間的なことをいわれるのは耐えられなかった。自分を責め自分自身の存在を消してしまいたかった」と。

 

 

 

でもMさんが気持ちを取り戻せたのは、支援してくれている、多くの人たちの暖かい声援だった。そして「十分な世話もできない自分たちを信じてくれて、会うたびに溢(あふ)れんばかりの笑顔を見せてくれる犬たちに救われたから」とも言っていた。

 

 

 

 

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繁殖場の犬たちはこんなにも狭く暗く汚い劣悪な環境で暮らしていました。中型、小型犬は、畳一畳半程のスペースしかない段ボール箱が敷かれた物置きの中へ閉じ込められていたのです。写真はMさんたちが訪れ、重い扉を開けたところ。普段は扉が閉められ、日中でもまったく日があたらず、中は真夏のクルマの中のような暑さだったそうです。虐待以外のなにものでもありません。このころはMさんやSさんたちが来ることだけが、犬たちの生きる望み、楽しみだったのでしょう。だって、手前の柴MIXは笑顔を見せているじゃないですか。

 

 

 

そのことがきっかけになったのか、事態は急展開していく。そう、次々と犬たちの一時預かり先が決まっていったの。全国に広がるボランティア団体が犬たちの一時預かり、健康状態や精神面のケア、里親募集までのすべてを引き受けてくれたのよ。

 

 

 

世の中って不思議。非難する人もいれば救いの手を差し延べてくれる人もいる。きっとMさんの今までの活動や人柄を評価してくれたんだ。おかげでマリアたちは救われた。

 

 

そうだ、ボランティアの人たちはレスキューされた犬たちを二度と不幸にしてはいけないという想いから、里親を希望する人の審査がとっても厳しかったらしい。家族構成、住宅環境、飼育場所、飼育経験などなど。ペットショップで犬を買うのとは大きく違うみたい。ママが里親を希望したときも、アンケートを書かされ、いろいろと質問されたんだって・・・・。
 

 

8月の鹿児島は連日の猛暑だった。繁殖場の夏の環境は、犬たちにはもちろん、Mさんたちにとっても想像を絶するくらい過酷だったと思う。ふん尿のにおいでマスクをしていても口の中に唾液(だえき)がたまり吐きそうになり、ジャージの中のTシャツは汗でグショグショ。それが生ぬるく感じ、やがてそれが寒気に変わったそうよ。あまりの暑さに体温調節ができなくなったんだ。一刻も早くここを立ち去りたいというのが本心だったかもしれない。

 

 

そんな炎天下、マリアたち大型犬が、小さな日陰の中に少しでも身体が入るように必死で穴掘りをしている姿を見たMさんは、いてもたってもいられずオーナーに地面に水をまいていいか尋ねてた。でも、炎天下に置かれたタンクの水は暖まっているから意味がない!と反対されたの。

 

 

 

 

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2007年8月の鹿児島。気温は連日30度Cを越えていました。炎天下、犬たちは小さな日陰を探し、穴を掘っています。でも、水気のない地面は固くカチカチでした。写真はゴールデンレトリーバーのレモン。先日、マリアと東京で再会したレモンのその後は、この 愛犬と暮らし旅する幸せ マリアの"一夜にして"ワンダフルライフ 『第四章 不思議な力』 を参照して下さい。※以前の記事の一覧を見るには、画面右側の"カテゴリーアーカイブ"の「マリアの"一夜にして"ワンderfull Life」をクリックして下さいね。

 

 

 

繁殖場には水道設備がないから、近くのオーナーの家からMさんたちが汗だくでポリタンクに水をくんで運んできてくれる。だから水がとっても貴重なのはわかるけど、「こんな過酷な状況から犬たちを救いたいという優しさはないのか」とMさんは腹が立ち、オーナーの了承を得ることなく、マリアたちのためにタンクの水を地面に何度も何度もかけてくれたの。

 

 

 

でも干からびたカチカチの地面は水を吸収するどころかはじいてしまう。雨の日はぬかるみ、まるで下水の中のヘドロ状態なのに。同じ土なのにどうしてこうも違うのだろう?地面までもがここでは地獄と化してしまう。Mさんは涙をこらえながら何度も何度も水をかけていたわ・・・』。

 

 

 

 

Mさんたちが繁殖場にいるのは1日、3~4時間ほど。それだけでもものすごくつらく過酷なのに、マリアをはじめとする多くの犬たちは、毎日、この逃げ場のない地獄で耐えていたのです。

 

 

「笑われるかもしれないけど、この現場に足を運び私がいつも思うこと。ここの犬にだけはなりたくない。ここの犬に生まれなくて良かった・・・・」。

 

 

Mさんは当時、自身のブログの中で、そんな心からの叫びをつづっていました。

 

 

 

 

 

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