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Sometime Atlas

第十一章 『愛犬と暮らす幸せ』 03

 

今でもマリアにわびたいと思うのは、あの、2011年3月11日のことです。カミサンは外出中で、ボクは仕事中に東京・お台場で被災し、家にやっとの思いでたどり着いたのはあたりが暗くなりはじめた午後4時すぎでした。東京ディズニーランドに近いわが家の回りはまさに惨憺(さんたん)たる状況でした。液状化で大変なことになっていたのです。幸い、家はほとんど無事でしたが、何度も何度も相当グラグラ揺れたに違いありません。お台場のホテルにいても、立っていられなかったぐらい揺れたのですから。

 

  

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                 2011年3月11日、17:01撮影。近所の様子です。液状化で道路は砂と泥水で埋まってしまいました。

  

 

その日、マリアは家で1人お留守番。玄関を開けると、マリアは玄関にへばりついていたようで、ハァハァ息を上げながら飛び出してきました。怖かったでしょうね、家の中にたった1人で。その証拠に、ホテルに迎えに行ったときのようにピョンピョン飛び跳ね、シッポをグルグル回すこともありません。ただただ恐怖から逃れたくてボクにまとわりついてくるだけでした。

 

 

 

家の中に入り、被災状況を確認していると(なにひとつ、倒れていませんでしたが)、もうお散歩の時間です。道路はうねり、ひび割れ、液状化で吹き上がった砂と水にまみれていました。そんな中を連れ出したのです。

  

 

 

本当に大変だったのはそれからです。水道は止まっていて、足元が泥だらけになったマリアを洗うこともできません。急いでマリアに食事とミネラルウオーターを与え、音信不通のカミサンと加入電話、携帯電話で連絡を取り合うこと数時間。やっと午後9時に家から15キロほどの距離にある避難所にいることが分かりました。幸い、わが家の電気は通っていて、マリアのいる場所だけ明るくして、クルマでカミサンの救出に出発です。しかし、道路は大渋滞。いやほとんど動かない。道の両側には帰宅困難になった人たちが溢れていました。普段なら20分で着くはずの、たった15キロの距離だというのに、避難所となった、付近一体が停電して真っ暗な闇に包まれた中学校の体育館に着いたのは深夜0時を回ったころでした。

 

 

 

そして大変な思いをしたカミサンを連れ、静まり返った家にたどり着いたのは午前2時すぎ。玄関を開けると、本震のあとのたびたびの余震におびえ、かつて経験したことのない不安な時間を過ごしたマリアがドアの内側で待っていました。過呼吸気味で体を震わせたまま、ボクたちに飛びつきます。「ママ、パパ、心配してたワン」「地面と家が揺れて本当に怖かったワン」。気持ちはその両方でしょうね。

 

 

でも、ちゃんと待っていてくれた。家を守っていてくれた。寒々とした部屋に入り、人生50余年の中でかつて経験してことのない不安の中、しかしマリアの顔を見てなぜかホッとしたことを覚えています。3月11日の深夜、わが家はマリアがいてくれたことで、ほんの少しではあるけれど、気持ちが和らいだということです。とはいえ、マリア、あの日、何時間も1人にしてごめんね。そうとも言いたいのです。

 

  

そのおわび、というわけじゃないですけど、翌日、万一の"家族全員避難所生活"に備えて、マリア用の大型カートを通販で速攻購入(なんと翌日、届きました!)。それに入っていれば、この先、ペット連れでもなんとかなると考えたのです。結果的に避難所生活には至りませんでしたけど、約1カ月、お風呂が使えず、娘の高層マンションにお風呂を借りに行ったとき、エレベーターにも乗れて、一緒に連れて行くことができたのです。もう、長い時間、1人にはさせられませんから。その大型カート、わが家ではマリアの「赤い愛車」と呼んでいます。東日本大震災の経験から、愛犬家にははっきり言ってお薦めです。畳めて、一部、分解できて、ちょっとした荷物も同時に運べます。ただし、ちょっと大きすぎた。クルマによってはトランクに入りません。あるいはトランクを占領する。購入する際はご注意を。

 

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          マリアのマイカー。ドアは前部に付いていて、全面メッシュで通気性も抜群。乗り心地はまずまずだとか。


 

 

そして、震災後、マリアにある才能があることが発覚しました。そう、『地震直前お知らせ犬』・・・・という才能です。マリアはかみなりや花火の音にものすごく敏感で、びびってすぐにシッポがおなかの中に入ってしまいます。では、地震の直前にどんな反応をするのか?ズバリ、寝ていようと座っていようと、スッと立ち上がり、耳が後ろにいきます。震えだします。

 

 

その直後です。携帯電話のあの恐ろしい緊急地震速報の警報音が鳴り、グラグラッと来る。犬は優れた聴覚で地鳴りの音が聞こえるんでしょうね。さすがです。カミサンは言います。マリアをいつも近くにおいておかなくっちゃね、と。それが通じたのか、3月11日以降、しばらくは家の中でボクたちの後ろをストーカーのようについて歩くようになりました。うっとうしい?とんでもない、、『地震直前お知らせ犬』ですから。 手放せません!お互い、必用とされている。それってとてもいい関係ですよね・・・・。

 

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