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Sometime Atlas

第一章 『夢よ醒めないで』 01

わが家にやってきたころのエクルは、鹿児島のボランティアの人のブログで見ていたように臆病(おくびょう)な性格のままでした。困ったのは、家族のいるリビングルームに決して入ろうとせず、なぜか玄関フロアから動かなかったことです。誰かが迎えにきてくれると信じているのか、にぎやかな場所が怖いのか。とにかく遠慮深くそんな姿が哀れでした。

 

 

それ以上にボクたちを心配させたのは、突然、環境が変わったせいか、2日間、お水を一滴も飲まず、オシッコもしなかったことです。夜は夜で小さな音にも反応して警戒し、ぐっすり寝ている姿を見たことがありません。

 

 

やがて1カ月がすぎ、エクルがわが家での生活にほんの少し慣れだしたころ、ボランティアのOさんから電話がありました。トライアル期間が終わり、その後どうするかの確認の電話です。1ヶ月という月日は情が移るのに十分です。迷うことなく「家の子にします」と答えました。

 

 

電話を切ったときのことです。それまで頑に玄関から動かなかったエクルが、リビングルームに臆病(おくびょう)な目をしながら入ってきたのです。ウソのような話ですが、神に誓って本当です。エクルはじっとその電話を聞いていたのでしょう。そしてここが第二の犬生を送る場所、幸せになれる場所、希望のある場所だと、犬心に気づき確信できたのでしょう。

 

 

その日からエクルは、かつてナナのお気に入りだったリビングのソファで寝ることになりました。ぐっすり寝ても大丈夫。家の子なんだから・・・夢は醒めないよ。

 

 

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