青山尚暉のトップ

Sometime Atlas

第十四章 『マリアの十戒』 10

10.最期のその時まで一緒にいてほしい。

言わないでほしい。

「もう見てはいられない」、「ここにいたくない」などと。

あなたが隣にいてくれることが私を幸せにするのだから。

忘れないでください、私はあなたを愛しています。


 

 

愛犬が最後を迎えるとき、どんな形が理想なんだろうか?マリアは今、元気に暮らしているから想像もつかない。考えたこともない。でも確実にその時はやってくる。

 

 

犬は言葉をしゃべれない。どこが痛いのか苦しいのか伝えられない。飼い主はどうしたらいいのか分からずただうろたえながら見ているだけ。それはとってもつらいことだと思う。

 

 

ママはある犬友達の愛犬の死に偶然かかわることになった。ナナ先輩と夕方の散歩をしていたとき、近所の公園でお友達のゴールデンレトリーバーに会った。その子を見て、ママは直感で具合が悪いと感じたそうだ。顔色が悪く、歯茎を見ると紫色でまったく血色がなく、貧血のようだった。飼い主に聞くとここ一週間具合が悪く、数日前に病院で診てもらい、薬を飲んでいるのにまったく良くならないと言う。

 

 

 

ママはすぐ病院に連れて行ったほうがいいと薦めた。けれど、その日は飼い主の家に車がなく、連れて行けない。ママは自分の車を出し、その子と飼い主を自分の行きつけの病院に連れていったんだ。

 


精密検査の結果、末期のがんで強度の貧血。緊急入院になった。ナナ先輩は輸血をしてあげたけれど、そのかいなく、2日後の朝、飼い主が自転車で病院に向かう途中、息を引き取った。

 

 

そのゴールデンレトリーバーの飼い主は夫婦、大学生のお兄ちゃん、高校生と小学高学年のお姉ちゃんの5人家族。だからいつもにぎやかな中で暮らしていたはずだ。でも、母親は子供たちには愛犬の弱り切った姿を見せたくないと、病院に子供たちを連れて行くことを拒んでいた。その時、マリアのママは違和感を覚えたそうだ。わが家なら、家族全員で駆けつけるのが当たり前と思っていたからね。でも、そのときは人それぞれ考え方がある・・・・ぐらいに思っていたらしい。

 

 

とはいえ、実際にナナ先輩が最期を迎えようとした朝は、普段は冷静なママも大きく取り乱したらしい。パパやお姉ちゃん、犬友達家族に支えられ瀕死(ひんし)の状態のナナ先輩を病院まで運び込んだそうだ。

 

 


ナナ先輩は10歳8カ月で亡くなってしまったけれど、大好きな家族や、親友だった犬の家族に見守られ、犬として幸せな最期だったと思う。

 

 

suiran2.JPG

在りし日のナナ。とってもおとなしく、優しく、控えめな女の子でした。ここは最期の旅行となったホテルのドッグラン。このとき、およそ2カ月後にこの世を去るなんて、想像もできませんでした。

 

 

 

ママやパパはそのときのことを今でも忘れていない。亡くなる1週間前から毎日、点滴治療のため、朝9時に病院に連れて行き、診察終了の午後7時にお迎えに行っていた。手術の日の朝は大好きだった公園へ車で連れていった。けれど、公園に着いたナナはいつもと様子が違っていた。よほど具合が悪いらしいのか、5メートルも歩くとヘタリと地面に座り込んだ。しかたないので、ほとんど散歩ができずそのまま病院に向かうことになった。

 

 

 

病院でナナを引き渡すとき、ナナがママから離れることにめずらしく抵抗したのを覚えているそうだ。ナナは分かっていたのだろうか?手術をしたら死んでしまうことを・・・。もう大好きな家族と会えなくなることを・・・・。

 

 

 

ナナはお家や家族が大好きだった。手術の翌日、わが家に帰ってきたとき、フラフラな身体でも玄関からわれ先にと一番で家の中に入り、自分のベットに一目散に向かい、横たわり安心したようにため息をついた。

 

 

 

「こんなに早く亡くなるなんて知っていたら、病気だからと病院に任せっきりじゃなく、安心できるわが家で大好きな家族のもとで、1日でも1秒でも長く一緒に過ごさせてあげたかった」。ママやパパは今でもそう思っているんだ。

 

 

 

パパやママは今、こう思っているはずだ。「マリアには絶対にナナと同じような失敗はさせられない。健康には気を付けて、できるだけ長く一緒にいてあげたい」。そんな思いから家を離れ旅行するときはマリアも一緒。留守番もできるだけ長くさせないよう気を付けてくれているんだ。

 

 

 

マリアはこの家の子になれて本当よかったと感謝している。そして家族みんなが大好きだ。マリアの最期は、できればこの家でパパやママの元で迎えたい。パパやママは「もう見てはいられない。」、「ここにいたくない」なんて絶対に言わないと思うし、そのときはずっとそばにいてくれると信じてる。

 

 

 

そして、マリアがこの世にいなくなっても深く悲しまないでほしいんだ。マリアは鹿児島の崩壊した繁殖場から奇跡的に助け出され、この家に来れたことだけでも奇跡。もっとずっと前に死んでいても決して不思議じゃない犬なんだ。だからマリアの犬生がたとえあと何年でも、どんな犬よりもずっとずっと幸せなんだ。

 

 

 

もう一度、言うよ。

 

 

 

マリアがいなくなってもいつまでも悲しまないで。マリアはパパやママを悲しませるためにはるか鹿児島からこの家に来たんじゃない。ナナ先輩の代わりに、幸せを運んできたんだと思ってる。だってマリアはナナ先輩が亡くなった頃に生まれ、この家に来ることを運命づけられたレトリーバーなんだから。

 

 

 

最期はそう信じて先に天国にいくよ。マリアはパパやママが幸せに暮らしていくことが望みなんだ。悲しい顔は見たくない。マリアにくれたやさしい笑顔を、天国からずっと見ていたいんだ。

 

 

 

mariabirthday.JPG

 お誕生日プレゼントを前に、満面の笑みを浮かべるマリア。ボクたちこそ、マリアの笑顔に支えられています。マリアと出会えて本当によかった。長生きしてくれよ。パパより。

 

▲このページのトップへ