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Sometime Atlas

第十章 『里親になるということ』 01

2005年3月12日。わが子のようにかわいがっていたゴールデンレトリーバーのナナを突然亡くして以来、家族はその大きな大きなショックからなかなか立ち直れませんでした。

 

  


2004.7.2nanabirthday2.JPG

2004年7月2日。ナナ10歳。これが最後の誕生日になるなんて、誰が想像したでしょうか。天然水と牛ヒレ肉、野菜、ヨーグルト、リンゴのフルコースで祝ってもらい、お腹いっぱいのナナ

 

 

 

とくにカミサンの落ち込みようは痛々しすぎるものでした。次の日から、朝、起きて階段を下りていっても、おはようという顔をしながら嬉しそうに駆け寄ってくるナナはもういません。いつも寝ている場所にもナナはもういないのです。外出時も、お散歩している、同じ犬種の犬を目で追い続け、寂しさが募る毎日を送っていたのです。

 

 

そして気付くと、もう2年半近くの年月がたっていました。

 

 

 

気持ちのけじめがついたのは、それまでリビングルームのナナが大好きだった場所に置いていた遺骨を、わが家の小さな庭に埋葬してからのように思います。食いしん坊で家族が大好きだったナナ。だから毎日、ボクたちが何を食べているか分かるように、家族の声がよく聞こえるようにと、その場所をダイニングの出窓の下に位置する植え込みに決めました。

 

 

 

ナナと暮らした10年8ヶ月、ボクたちはたくさんの幸せをナナからもらいました。そして飼い主に対する従順な愛、純粋な心、犬という生き物の素晴らしさを知ることができたのです。

 

 

 

 

nana_iei.JPG                               ナナの遺影。今でもリビングルームの、ナナが大好きだった場所に飾ってあります

 

 

 

そのころ、これほど人間を幸せにしてくれる犬の中にも、同じ空の下でこの世に生を受けながら、幸せをまったく知らずに生きている犬がいる。そんな現実をあらためて知り、カミサンは幸せを知らずにいる犬を里親として引き取りたいと思うようになったと言います。それは幸せな10年8カ月を過ごしたナナからの、無言の遺言ではないかとも。天使の心を持ったナナと同じ犬でありながら、ちょっとした運命のいたずらで不幸な境遇に置かれている犬をこの手で幸せにしてあげたい、カミサンの気持ちは日一日と強くなっていったのです。

 

 

 

カミサンが最初、マリアと同じ鹿児島の、崩壊した繁殖場にいたゴールデンレトリーバーのレモンちゃんを引き取ることを決めたとき、ボクはイタリアにいました。そしてそのことは、メールによる事後報告だったのです。

 

 

 

なぜなら、カミサンはボクが快諾してくれるとは、思っていなかったからです。それは間違いじゃありません。実際、返信の可否、内容に正直言って悩みました。『第四章 不思議な力』01にその日の記述がありますが、今だから告白しますが、実は悩みに悩んだのです。

 

 

 

ここ2年、ボクもカミサンもペットロスという悲しみを抱えて暮らしてきました。もし、不幸な犬が、劣悪な環境で育ったゆえ重い病気を持っていて、わが家にやって来て、何かの理由ですぐに死んでしまったら・・・・。ボクはともかく、カミサンのペットロスの悲しみはさらに鋭く深く突き刺さり、取り返しのつかない事態を招いてしまうのではないか、と。だから、答えに悩んだのです。

 

 

 

でも、結果的に「ゴールデンレトリーバーの里親になりたいんだけど、承諾してもらえる」というメールの問いに対して「もちろん」と、ミラノの大聖堂の前から携帯電話のメールで返信したのです。ドゥオーモと呼ばれる荘厳な大聖堂から発せられる圧倒的なパワーが、ボクの背中を押してくれたのかも知れません。

 

 

 

 

 

milano.JPG                                              ミラノの大聖堂。この前で、ボクは携帯電話から、返信しました。

 

 

 

 

帰国して、わが家にレモンちゃんが来た日のカミサンのうれしそうな顔は今でも忘れられません。けれども、翌日、レモンちゃんの病が発覚し、ボランティアの元で手術を受けることになりました。恐れていたつらい現実。カミサンはレモンちゃんと離れることにひどく悲しんでいました。手術で摘出したがん細胞の検査結果次第で、わが家で引き取ることをボクは了承し、娘もまた同じ意見でした。

 

 

 

 

 

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                                          わが家にやってきた日のレモンちゃん。ナナにとてもよく似ていました。

 

 

 

カミサンの本心はレモンちゃんを何とかして自分の手元に置きたい、それに尽きます。が、そんな中、マリアたち(当時はエクル)4頭が羽田に到着。レモンちゃんと同じボランティアのOさんが一時預かりで引き取ることになっていました。

 

 

 

まさに急展開の中、カミサンは東京での行き先がただ一頭、決まっていなかったマリアをわが家で預かりたいと言い出したのです。レモンちゃんが入院し、ボラティアOさんの負担を軽くしてあげたいという想いだったようです。正直、ボクは反対でした。同じ鹿児島の繁殖場から来た子です。どんな病気をもっているか分からない。不安材料が今まで以上にあったのです。

 

 

 

けれど、普段からあまりわがままを言わない、カミサンのたってのお願いでした。ボクは、はじめて里親になるということに対して、マイナスのことばかり考えていたように思います。なにしろとびっきりの !? 心配性ですから・・・・。

 

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