鈴木エドワードのトップ

GOod Design

3.環境-ハーバード大学大学院へ

就職するも不完全燃焼

 

 たまたま、新宿にあった外資系の設計事務所が募集していたので、入社することができました。大学を卒業して、ようやく定職に就いたわけです。ところが、まだ、環境保護に未練があったのですね。1年もすると、建築設計の仕事に物足りなさを感じるようになりました。建物のデザインだけではなく、建物を含んだ環境デザインへの意欲が高まったのです。
 とくにバックミンスター・フラーの思想「ワールド・ゲーム」に強くひかれていました。ワールド・ゲームとは、科学的戦略(デザイン・サイエンス)で世界に不平等のない物質的ユートピアを築くことを目的としたゲームです。通常のゲーム理論では、一方が勝者となり、もう一方は敗者となります。しかし、ワールド・ゲームには敗者は存在しません。物質的ユートピアというゴールを目指して、全員が力を合わせれば、全員が勝者になれるゲームです。フラーの構想では、コンピューター・シミュレーションで、世界各国のエネルギー資源や食糧、マンパワー、テクノロジーなどの理想的な保存や移動、利用、配分を計算し、全員が実行して平和な社会の実現を目指します。
 このワールド・ゲームを追求し、「平和な世界」づくりを目指したい気持ちに駆られました。そのためには、知識が必要です。そう考えた私は、再び大学院で学ぶ決意を固めました。

 

 

es-WORLD GAME -2.jpg 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バックミンスター・フラーが考案したダイマクションマップ。ワールド・ゲームの思想は、世界各地で教材として活用されており、このダイマクションマップがゲームボードとなっています。

 

 

フルブライト奨学金-採用までの内幕

 

 とはいえ、経済的に余裕はなく、奨学金でも受けなければ難しい状況でした。そんなとき、フルブライト奨学金の募集が目に入りました。フルブライト奨学金は、アメリカが世界各国の相互理解を高めることを目的に発案した奨学金制度です。日本・アメリカ教育委員会のフルブライト奨学金は交換留学制度で、留学生は学んだ後、必ず帰国することが条件として定められていました。
 結果から言いますと、私は運よく採用となり奨学金を受けました。運がよかったと言いますのも、5人の選考審査員のうちアメリカ人3人が不採用と判断したのにもかかわらず、残りの日本人2人(建築家と都市計画家)が反対を押し切って採用にしたからです。後から聞いた話ですが、不採用と判断した3人は、私の経歴や学歴から「彼を採用したら、留学後もアメリカにとどまって日本に戻ってこないだろう」と思ったそうです。
 運よく採用された私は、次に大学院を選ぶ過程に移りました。フルブライト奨学金に採用されれば、ほとんどの大学で歓迎してくれます。実際、ハーバード大学やMIT、ペンシルバニア大学、エール大学、カリフォルニア大学バークレー校など名門と呼ばれる大学に応募し、そのすべてに合格しました。本来なら、当時、建築分野ではトップとされていたカリフォルニア大学バークレー校を選ぶところでしょうが、私はハーバード大学大学院を選びました。理由は、1年間のマスタープログラムです。奨学金の給付期間は1年間に限られており、その期間中にマスター(修士)が取得できるプログラムは、ハーバード大学大学院にしかありませんでした。また、今でもそうですが、日本ではバークレー校よりも、ハーバード大学の方が名前を知られており、帰国後に有利に働くとの考えもありました。
 でも、ハーバード大学を選んだ一番の理由は周辺環境です。実は、大学の隣にバックミンスター・フラーのスタジオがありました。私は、フラーのワールド・ゲームを追求し、「平和な世界」づくりをライフワークにするために大学院への入学を決めました。ですから、私にとって、これ以上の環境は考えられませんでした。

2010.08.30|00:00|GOoD DESIGN

▲このページのトップへ