連載第003回 1.DESIGNとは何か? 構造と形
構造と形
建築家としてデザインを考えるとき、2つの要素を考慮しなければいけません。「構造」と「形」です。よく構造=形と思われがちですが、この2つは違う要素です。確かに構造が形に直接結びつけられる場合もありますが、実は別なものです。そして、構造はすべて三角形がベースとなっています。
繰り返しますが、フラードームは、基本的に三角形の組み合わせで成立しています。四角形だと安定しないからです。
なぜ、四角形だと安定しないのでしょうか? 建物は四角形に見えるのに。
同じ長さの4本の棒を可動するジョイントでつないだ正方形の模型をつくります。この模型に力を加えると、簡単に四角形が崩れます。正四角形を6つ集めた立体であるキューブになったとしても、ほんの少しの力で倒れてしまいます。


四角形はゆがむ 四角の立体もゆがむ
対して、3本の棒を可動するジョイントでつないだ正三角形の模型は、力を加えても三角形を保ち、崩れません。4つの正三角形で構成した立体的なテトラ(正四面体)になっても同様で、安定性にすぐれています。要するに、2次元でも、3次元でも、三角形がいちばんシンプルな自己安定型の形状なのです。
フラードームは、この三角形をモジュールにして構成されることで、安定した強い構造を保っているのです。


三角は平面も立体も安定する
このように、構造は三角形をベースにしないと成立しません。しかし、「ほとんどの建物は、四角形で構成されている」と思う人も多いでしょう。確かに、外から見る限り、ほとんどの建築物は四角形で構成されています。ところが、実際には、壁のなかに筋交い(ブレース)が入っていて、実質的には三角形がベースになっているのです。そうしなければ、構造的にもろくなってしまうからです。
すでに説明したように、棒で組んだ四角(2-D)やそのような四角を集めた立方体(キューブ、3-D)は「形」ではありますが「構造」ではありません。唯一「構造」として成り立つ「形」は三角(2-D)や三角を組んで作る正四面体(テトラ、3-D)など三角形を基本にした多面体です。
つまり、「構造」=「内部的な自立」であり、内部で力のバランスを保っています。そして、そのほとんどがもっともシンプルな自己安定型の三角形で構成されています。いうまでもなく、構造も重力や風などの外の力に左右されますが、それ以前に「自立」しなければいけません。無重力や無風の宇宙環境のなかでも構造は自立する必要があります。
一方、「形」は基本的に外からの要素に対するものです。空気や水、風、引力などの外的環境からの力に対して、形状が決定されます。ですから、イルカは水中を速く泳ぐために、鳥は空を速く飛ぶために適した形をしているのです。この形というのは、必ずしも構造と直接にかかわっているわけではありません。




図1-3、"A Beginners' Guide to Constructing the Universe," Michael S. Schneider から引用
わかりやすいたとえでは、カップから上る水蒸気やロウソクの煙の形状があります。カップから上る水蒸気やロウソクの煙を観察しますと、図1のような動きをしていることがわかります。
なぜ、このような形になるのでしょうか? カップから上る水蒸気やロウソクの煙は、まっすぐ上に行こうとするのですが、空気抵抗によって曲がらざるを得ないのです。ですから、図1のような形状になるのです。
図2は、コーヒーにクリームを入れたとき、クリームがどのような形になるか示したものです。クリームもまっすぐ水平に行こうとするのですが、コーヒー(水)の抵抗により、回らざるを得えません。その結果、マッシュルームの断面のような形状になります。
そして、図3はマッシュルームの成長過程を描いたものです。地上に顔を出したマッシュルームは、時間の経過は違っても、鍋の水蒸気やロウソクの煙と同様、まっすぐに伸びようとします。ところが、空気や雨、重力などの抵抗によって、だんだんと丸まっていくのです。好きで丸まったわけではありません。
このように、「形」は外からの圧力や抵抗によって決まるものです。ダイナミックに動いている外の力に対する反応、返事、答えです。この点が、内部で力のバランスを保つ「構造」と違います。
「形」は、ゴルフや空手、柔道、合気道の動的な「形(カタ)」に通じるところがあります。「形」は、最小限の力で最大の効果を得るために考案されたもので、ゴルフや柔道も形通りに動くことで軽く、楽に、効率よく、ボールを飛ばしたり、相手を投げたりすることができます。
これが、内部的な力のバランスを保つ「構造」と外部的な力とのバランスを保つ「形」の違いです。



