私が設計した建物紹介013 SUPER VILLA Ⅰ(軽井沢・1984年)
SUPER VILLA Ⅰは軽井沢で設計した別荘で、「蒼い影」と呼んでいる作品です。作品群としては、当時、私が取り組んでいたテーマのフルメタルジャケットではなく、後に新しいテーマとなる見える建築・見えない建築の要素を含んでいます。
©鈴木エドワード建築設計事務所
オーナーは、3人のお子さんのいる5人家族です。依頼を受けた私は、軽井沢に建てる別荘で、お子さんが3人いらっしゃるという条件から、メタルなど外壁を覆ってプライベート空間を確保するフルメタルジャケットの手法は相応しくないと考えました。フルメタルジャケットは都心部など住宅が肩を寄せ合うようにして建てられ、プライベート空間の確保が困難な状況下で生まれたテーマです。今回は、軽井沢で、周辺には住宅ではなく緑が生い茂っていますので、防衛的になる必要がありませんでした。
オーナーの一番の要望は、「子どもを中心に」でした。そのニーズをベースに、4、5案の設計デザインをプロポーズしました。そして、オーナーは大いに迷った末、大胆な手段をとりました。それは、お子さんに選ばせることでした。3人のお子さんは私のプランを興味津々に見て、鳥瞰図が「スーパーマンの胸のマークみたい」とアルファベットのS字型をモチーフにした遊び心にあふれたプランを選びました。
お子さんたちが気に入ってくれたことをうれしく思った半面、「ちょっと無責任な提案をしたかな」との後悔が頭をよぎりました。といいますのも、このプランは予算や工期を考慮せず、独特な形状から工法的にも困難が予想されたからです。とはいえ、お子さんたちをがっかりさせるわけにはいきません。壁の曲線を描くにはRC工法が適していますが予算がオーバーしますし、2×4工法では地元の建築会社が慣れていないこともあってうまく曲線を描くことができないおそれがありました。結果的に、在来工法に落ち着きましたが、図面や模型ではディティールの再現が難しく、工場で制作した原寸大の模型を持ち込むという苦肉の策に出ました。
©鈴木エドワード建築設計事務所
レイアウトは、半分が大人のゾーンで、もう半分が子どものゾーンと、明確にするプランを採用しました。とはいえ、リビングやダイニング、ファミリーエリアの共有スペースは大人のゾーンに設けており、子ども部屋にスペースを大きく割り当てています。子ども部屋を大きくしたのは、将来、お子さんたちが独立した際、それぞれの家族で使えるようにとの思いからです。また、初めての試みとしてハーフミラーガラスを、円形のリビングを囲うように配しました。これが想像以上の出来栄えとなり、後に「SUPER VILLA Ⅱ」でも応用することになります。
そして、私のこだわりは色合いにも及んでいます。外壁は仕上げ材として、落葉松を採用していますが、塗装は3倍に薄めた銀塗装を施しました。自然の中に建つ別荘にあえて自然に近い色を選ばなかった理由―――コントラストを演出してお互いを引き立てながら、調和して溶け込む効果を狙いました。この発想が、後のテーマである見える建築・見えない建築へと発展します。内観の仕上げ材は、床がケヤキのフローリング合板で、壁と天井がべニヤです。その全面にモノトーンの薄いパープルグレー「A Whiter Shade of Pale」の拭き取り塗装を施し、窓にはブルーペンのハーフミラーを選びました。
このカラーリングのテーマは、1960~70年代に活動したイギリスのロックバンド、プロコム・ハルムのデビュー曲『蒼い影』です。私は世界的にヒットしたこの曲が好きで、「いつか『蒼い影』をテーマにしたカラーコーディネーションをしたい」との思いを秘めていました。実際、試みたところ、下地のべニヤのムラがそのまま塗装表面にも生きて、趣きのある風合いとなりました。さらに陽光がブルーペンの窓を通り、床や壁に蒼い影を落とすほか、陽光を受けたパープルグレーの色調トーンがブルーやピンク、ホワイトなどに変化し、しばらく眺めていても飽きない仕上がりとなりました。
何よりも、お子さんたちが竣工した「蒼い影」を一目で気に入ってくれたことが一番でした。お子さんたちは、形状と銀塗装の外観から「森の中に着陸した宇宙船みたい」とイメージを膨らませ、スーパーマンやスペースシップをもじって「スーパーシップ......いや、別荘(VILLA)だからスーパービラだ」と名付けました。
自分の長年の思いが具現化できたといううれしさとともに、子どもたちの感性や想像力に感心させられた仕事でした。
◆次回更新は8月8日の予定です
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