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私が設計した建物紹介009 ムパタ・ロッジ(ケニア・1992年)

神が創造した自然のパノラマに感動

 ©鈴木エドワード建築設計事務所

es-MPATA1.jpg ムパタ・ロッジは、雑誌編集者の小黒一三氏が中心となって設立したメンバー制サファリパークホテルで、ケニアの南西部、タンザニアとの国境沿いに位置するマサイマラ国立保護区にあります。
 東京から丸一日かけてナイロビに飛び、そこから小型飛行機で40分のところにマサイマラ国立保護区はありました。建設予定地は「オロロの丘」と呼ばれる丘の上にあり、そこからの景色は大草原を一望に見下ろせる素晴らしいものでした。広々と果てしなく続く大地、青く澄みわたる空。その大パノラマを見た瞬間、私の中で設計構想が決まりました。
「神が創造した自然のパノラマを生かそう」
 構想が固まれば、あとは「大草原を見下ろす大パノラマを可能な限り、ピクチャーウィンドゥにはめること」、「神の創造物である絶景を壊さないこと」に注意して基本設計を練るだけでした。この環境では、日本の建築物のような込み入った詳細な設計は不要です。大切なのは、素晴らしいパノラマとアフリカの空気、光を生かした空間づくりです。とくに、アフリカの太陽が織りなす陰影の表現に腐心しました。もっとも、込み入った設計をしようにも、建設工事に携わるのが経験の浅いマサイ族の集団でしたから、あまり無理強いはできなかったでしょう。

                                 ©鈴木エドワード建築設計事務所
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 建材は、できる限りテクノロジーを感じさせるものを避け、検討を重ねた末に構造材は丸太、床材はケニア原産の石、壁は化粧しっくい、屋根は木のシングル屋根材にしました。また、電気は自家発電、給湯はソーラーパネル、空調はエアコンディショナーではなくアフリカの自然の風と、設備面もテクノロジーをあまり感じさせないシステムを採用しました。
 しかし、何もない大草原にホテルを建てる試みは、予想以上に困難を伴いました。それは、ホテルまでのアクセス道路や水道がなかったからです。とにかく、ホテル建設と並行して、インフラストラクチャー整備が必要でした。水は、ホテルのかなり下方を流れる川からポンプアップしました。また、アクセス道路は、ホテルに到着して初めて丘からの大パノラマが見えるという劇的な演出を狙って、あえて車窓から景色が見えない崖を通しました。

 

悠久のパノラマが開けるサプライズ

 

 ムパタ・ロッジは、クラブハウスと23室のコテージから成ります。いずれも、半円形を組み合わせた構造とし、180度のビスタ(展望・眺望)を確保しました。半円形は、180度に広がるマサイマラ国立保護区の大パノラマを最大限に生かすのはもとより、アフリカの自然に溶け込む形でした。その証左に、マサイ族の住居は円形で、集落もまた円形を成しています。つまり、円形はアフリカの伝統的な住居の形態なのです。

 

©鈴木エドワード建築設計事務所
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 クラブハウスは2階建てで、アプローチは丘の傾斜を利用して2階に設けました。2階に、ロビー、ラウンジ、フロントデスク、オフィス、ショップ、暖炉付きのライブラリーをレイアウトし、1階にダイニングエリア、バーを配しました。中央には吹き抜けの中庭と階段があり、開放感を高める効果を担っています。設計上、2階では大草原のパノラマを眺めることはできません。それも演出で、階段を下りたとたん、悠久の大パノラマが視界に飛び込んでくるサプライズを仕掛けました。コテージは、大小の2タイプを用意。各コテージには、大草原を眺めながら楽しめるジャグジーやバーベキューテーブルを配すなど、最高のリラクゼーション環境を整えました。中央には、ファイバーグラスのスカイドームを設けました。これは、夜間、コテージの道しるべとなる行灯(あんどん)の役目を担います。

 

 

 

 

 

 特筆すべきは、アーティストの鈴木純郎氏が2年近くケニアに滞在して家具をデザインしたほか、ケニア在住のランドスケープ・デザイナーの西川千代さんがランドスケープを担当したことです。2人の感性は、私の予想をはるかに超えており、「素晴らしい」の一言に尽きます。

 

 最後に余談になりますが、宿泊したフルート奏者が「今までで、最高の音響効果」と絶賛してくれました。予期せぬ賛辞に喜びつつ、「音響効果もアフリカの大草原がもたらした恵みかな」と自然に感謝しました。

                              ◆次回更新は12月27日の予定です

2010.12.20|00:00|Architect Atlas

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