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私が設計した建物紹介007 JOULE-A(麻布・1986-90年)

3段階のシステムを持つ複合オフィスビル

 

es-JOULE-A3.jpg JOULE-A(ジュール・エー)は、麻布十番に建つ複合オフィスビルです。計画では、麻布十番周辺の発展のベースとなることが期待されました。
 設計では、最初に総合設計制度(※1)を活用し、容積率の割り増しを図りました。その結果、1、2階は4層分の吹き抜け空間を持つテラス状の公開空地とショップ、4~7階は2層のメゾネットタイプのオフィス、8、9階はスポーツクラブ、10、11階は住宅、地下1階はレストランというミニタウンさながらのプランになりました。また、公開空地を地元住民に広く利用してもらうため、パブリック用の道路を貫通させています。
 システム面では、オフィスビルである以上、インテリジェント化は当然のことです。しかし、不特定多数のテナントのニーズに応える柔軟さも必要でした。そのため、4~7階と8、9階、10、11階と3段階に分けられたシステムを採用しています。

 

 

©鈴木エドワード建築設計事務所

                                        ©鈴木エドワード建築設計事務所


es-JOULE-A2.jpg 逆に共通するのが、庭園です。外部低層部の景観として竹を植えた庭園を配したのはもとより、高層部にも隔階ごとに扇状の空中庭園を設けて低層部と同じ竹を配しました。空中庭園に架けた立体トラスは、構造上、高層部の空中庭園を守る役割を果たしています。

 

亀裂でJOULE(ジュール)を表現

 

 ファサード(正面)はパンチングメタルのスクリーンで覆いました。これにより、周囲の雑然とした風景をぼかして趣きのある景色に変えるほか、日本で最も騒音が大きいと言われる交差点の音をろ過する効果も発揮します。
 この手法は、当時、私が掲げていたテーマ、フルメタルジャケットの応用です。フルメタルジャケットは、外壁にメタルなど金属素材を多用して防衛的なイメージで固めて、中は緑を配するなど柔らかいプライベート空間を確保する手法です。また、外観に亀裂を走らせるなど、以前のテーマであるアナーキテクチャー(※2)の名残もありますし、その後のテーマとなる見える建築・見えない建築(※3)、インターフェース(※4)の要素も含んでいます。
 外観の特徴である亀裂は、エネルギー単位のJOULE(ジュール)を表しています。このモチーフには、「都心の人々に少しでもエネルギーを与えるランドマークになれば」という思いを込めています。この破れたようなモチーフは、当初、クライアントが難色を示しました。しかし、最後は文字通り"破れかぶれ"の説得で納得していただけました。

 

根底にあるNATURE(自然)vs FUTURE(未来)

 

es-JOULE-A1.jpg JOULE-Aの根底には、「NATURE vs FUTURE」があります。一般的に自然と人間、テクノロジーは一線を画し、互いに対立軸にあると思われています。しかし、私は、人間は自然の一部であり、人間が生み出したテクノロジーも自然の延長線上にあると考えています。したがって、自然と人間、テクノロジーは対立の関係ではなく、調和の関係にあると定義しています。
 ただ、唯一、人間は自然界にない力を持っています。それは、マインドです。人間はマインドにより、未来を予測したり、考えたりすることができます。

 

 

 

 

 

 

 

©鈴木エドワード建築設計事務所

 

 そう考えますと、対立軸あるいは二重性は自然と人間、テクノロジーではなく、NATURE(自然)とFUTURE(未来)にあると言えるでしょう。
 私は、この対立軸あるいは二重性に興味を覚え、一つの建物の中で表現できないかと考えました。この考えに基づいて設計したのが、今回のJOULE-A、そしてPLAZA MIKADO(赤坂)、MEISEI WEB(中目黒)です。

 

※1

都市中心部の空洞化に対処するための緩和制度。ビル内に住宅がある場合、容積率の割り増しなどが緩和される

※2

アーキテクチャーとアナーキーの2つの相反する言葉を結び付けた造語。人間が内包する二重性を表現した作品群

※3

見える建築は、「オブジェ的かつ彫刻的な建物で、存在感を放っている」で、見えない建築は、「主張しない建物で、周囲の環境に溶け込んで存在を感じさせない」と定義し、この両極の要素を兼ね備えた作品群

※4

外と中を完全に遮断しないフロストガラスなどのスクリーンを設け、その内側にバッファーゾーン(緩衝地帯)となる緑などを配する手法。このスクリーンとグリーンのバッファーゾーンの組み合わせにより、隣人と気配を感じさせながらプライバシーを保つことができるうえ、敷地内に心地よい小宇宙を形成することが可能。

2010.11.22|00:00|Architect Atlas

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